Ⓐ「HER2/neu」検査の留意点および判定基準
1)
HER2/neuにおける検索対象は乳癌においては浸潤性乳管癌、胃癌においては原発巣及び転移巣組織となります。提出検体がそれ以外の組織型の乳癌や原発臓器の異なる癌と確認された場合、その旨のご報告を致します。
2)
新鮮組織を用い、10%中性緩衝ホルマリン液にて6~48時間固定後、速やかにパラフィン包埋処理してご提出下さい。(推奨)
3)
以下の条件では、HER2の抗原性の変化により適正な検査結果が得られない場合がありますので、避けてください。
  1. アセトン系、アルコール系固定液を使用した検体
  2. 固定時間が48時間を超える検体
  3. 固定後長期間を経過した検体(過去の保存検体)
4)
検体をホルマリン固定組織にてご提出いただいた場合、原則としてまず病理診断(病理組織検査)を実施致します。「病理診断不要」、あるいは、 「HER2検査」のみをご希望の場合は、依頼時にその旨をご指示下さい(HER2検査のみの場合、パラフィンブロック作製費用は別途請求させていただきます)。

【乳癌判定基準】

スコア 染色パターン
0 被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞がない、あるいは10%に満たないもの
1+ 被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あるが、腫瘍細胞の一部の膜に限局した弱い染色強度を
有するもの(4倍の対物レンズ下で細胞膜の染が確認できる)
2+ 被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あるが、腫瘍細胞の一部の膜に限局した中程度の染色強度を
有するもの(4倍の対物レンズ下で細胞膜の染色が確認できる)
3+ 被検体組織中の腫瘍細胞のなかでHER2陽性細胞が10%以上あるが、腫瘍細胞の一部の膜に限局した強度の染色強度を
示すもの

【胃癌判定基準】

スコア 切除標本の染色パターン 生検標本の染色パターン HER2
過剰発現判定
0 細胞膜に陽性染色なし、あるいは細胞膜の陽性染色が
ある癌細胞が一切片に10%未満である。
陽性染色なし、あるいは細胞膜の陽性染色がある
癌細胞なし
陰性
1+ 弱/ほとんど識別できないほどかすかな細胞膜の染色が
ある癌細胞が一切片に10%以上認められる。癌細胞は
細胞膜のみが部分的に染色されている。
癌細胞の染色割合に関係なく、弱/ほとんど識別できな
いほどかすかな細胞膜の染色がある癌細胞クラスター
(集塊)が1つ以上あり
陰性
2+ 弱~中程度の完全な側方あるいは側方・基底膜側の細
胞膜の染色がある癌細胞が一切片に10%以上認められる。
癌細胞の染色割合に関係なく、弱~中程度の完全な側
方あるいは側方・基底膜側の細胞膜の染色がある癌細
胞クラスター(集塊)が1つ以上あり
境界域
(Equivocal)
3+ 弱~中程度の完全な側方あるいは側方・基底膜側の細
胞膜の染色がある癌細胞が一切片に10%以上認められる。
全周囲性に認められない場合もある。
癌細胞の染色割合に関係なく、強度の完全な側方ある
いは側方・基底膜側の細胞膜の染色がある癌細胞
クラスター(集塊)が1つ以上あり
陽性

[注] 腫瘍細胞の細胞膜における染色性および染色強度が判定対象であり、細胞質に限局する陽性染色は非特異反応とみなす。